これまで、国内のビジネスコンサルティング市場の成長は、個別テーマへの需要と、それを担うコンサルタントの人員拡大によって説明されてきました。「需要が増えれば人を増やし、売上が伸びる」これが長く前提とされてきた成長の方程式です。

しかし、その前提は変わりつつあります。IDCは、国内ビジネスコンサルティング市場の支出額が、2025年の約8,822億円から2030年には約14,064億円へと、年間平均成長率(CAGRCompound Annual Growth Rate9.8%で拡大を続けると予測しています。

注目すべきは規模だけではありません。AIを核とした企業変革が市場を牽引する中で、案件の規模や収益化、そして成長と人員数の関係そのものが構造的に変化し始めています。本稿では、IDCの最新予測から読み解ける3つの構造変化を解説します。

構造変化(1)AIを核とした「全社変革」が市場を牽引し、案件が大型化する

成長の最大のドライバーは、企業のAI活用と変革需要です。生成AIやエージェンティックAIが「試す」段階から「変革する」段階へ移行し、局所的なAI導入ではなく、業務プロセス・データ基盤・組織体制を一体的に変革する全社変革型の案件が増え、ディールサイズの大型化と複数年にわたる長期プログラム化が進んでいます。

この動きはセグメント別の成長率にも表れています。業務改善コンサルティングは、AIエージェントの業務実装支援やERPのサポート終了(EOS)対応、レガシーモダナイゼーションに伴う上流支援を背景に、全セグメントで最も高い成長を示す見通しです。組織/変革コンサルティングも、後述する「人と組織」の変革需要を背景に堅調な成長が見込まれます。

構造変化(2):「人員増を上回る成長」への転換

より本質的な変化は、売上成長と人員数の関係が切り離され始めていることです。従来の労働集約的な人月モデルに対し、人員数の伸びを上回るペースで売上を拡大するファームが増えています。背景には、複数の要因が同時に作用しています。

  • フィー単価の上昇:人材の供給不足を背景に、案件単価が人員数の伸びを上回って上昇し、1人当たり売上を押し上げています。
  • ソリューション化・アセット化:再利用可能なフレームワークやAIツール、業界別テンプレートを提供物に組み込み、人員を比例的に増やさずに価値を拡大しています。
  • グローバルデリバリーの活用:海外デリバリーセンターやニアショア/オフショアを活用し、国内人員コストを抑えながら供給能力を拡張しています。
  • AIによるデリバリー生産性の向上:現時点で「劇的」ではないものの、1人当たり売上額の着実な向上として表れ始めており、2030年に向けて効果は累積していきます。

さらに中長期では、提供モデルそのものの変容も萌芽的に進んでいます。

  • 成果報酬型(アウトカムベース)契約:顧客の成果指標に連動した報酬設計。
  • プラットフォーム/マネージドサービス型:継続的な収益(リカーリング)を生む提供形態。
  • BOT型・内製化支援:顧客の自走を支えるBOT(Build-Operate-Transfer)型の関与モデル。
  • GCCの活用支援:GCC(グローバルケイパビリティセンター)の構築・活用支援。

これらはまだ一部にとどまりますが、顧客の価値可視化ニーズの高まりとともに採用事例は増えており、人月依存型モデルからの構造転換がファーム各社の戦略課題として明確になりつつあります。

構造変化(3):「人と組織」の変革支援が成長の中核テーマに

企業変革の主軸は、戦略と業務、人と組織、テクノロジー(AI)を横断する形へと拡張しており、中でも「人と組織」の変革支援の重要性が高まっています。全社的なAI変革においてチェンジマネジメントとタレント支援は不可分であり、その需要は単独の案件としてだけでなく、大型変革案件の不可欠な構成要素として組み込まれる傾向を強めています。具体的には、以下のような領域で需要が拡大しています。

  • リスキリング/アップスキリング:AIを前提とした働き方に向けた人材育成。
  • 人的資本経営(HCM):戦略立案から実践までの支援。
  • ワークフォース変革:AIケイパビリティを軸とした役割・組織・チームの再設計。
  • チェンジマネジメント:大型変革プログラムに組み込まれる変革推進支援。

これらは経営戦略や財務・経理など他機能と統合され、複合的な「経営課題」として扱われるようになっています。組織変革の実績を持たないファームは、最も価値の高い変革案件を獲得・維持することが難しくなりつつあります。

ビジネスコンサルティングはITコンサルティングを上回る成長を続ける

国内コンサルティング市場全体(ビジネス+IT)は、2025年の約1兆4,554億円から2030年には約2兆2,897億円へと拡大します。このうちビジネスコンサルティングはCAGR 9.8%でITコンサルティング(同9.0%)をわずかに上回り、全体に占める構成比は2025年の60.6%から2030年には61.4%へと緩やかに上昇する見通しです。背景には、AIを核とした変革の入り口が「経営アジェンダ」からトップダウンで設定されるようになり、戦略立案や業務変革設計といったビジネスコンサルティング領域から案件が起動するケースが増えています。主要事業者の多くが上流のビジネス領域とIT実装を一体化したデリバリーへ移行しており、ビジネスコンサルティング比率の高い案件が収益成長を牽引しています。

コンサルティング事業者のリーダーへの示唆:2030年に向けた5つの戦略的優先事項

以上の構造変化を踏まえると、市場の拡大に乗るだけのファームは、構造転換を進めた競合に成長率で劣後するおそれがあります。次の成長フェーズを取り込むために、各社が優先すべき打ち手は明確になりつつあります。

  • AIを核とした全社変革案件の獲得:個別ソリューションではなく、複数年にわたる大型プログラムにポジショニングする。
  • AIによるデリバリー生産性への投資:競争要件になる前に、今から体制と仕組みを構築する。
  • スケーラブルなソリューション・アセットの整備:人員数に比例しない収益構造へ転換する。
  • 「人と組織」の変革ケイパビリティの確立:最大級の案件を勝ち取る鍵として、組織変革の実績を積む。
  • 成果報酬型・プラットフォーム型モデルの探索:価値の可視化を求める顧客の増加に備える。

国内ビジネスコンサルティング市場は、これからも堅調に拡大します。しかし、その成長の「中身」は、AIを前提とした提供モデルへの転換と、「人と組織」を中核に据えた全社変革支援へと確実にシフトしていきます。この構造変化を早期に捉え、自社のオファリング・人材・デリバリー体制を適応させたファームこそが、2030年に向けた次の成長フェーズを取り込むことができるでしょう。

関連する調査やご相談について 本稿は『国内ビジネスコンサルティング市場予測、2026年~2030年』(IDC #JPJ53501026、2026年5月発行)[MD1][TU2]に基づいています。市場規模・予測の詳細、セグメント別・産業分野別のデータ、主要事業者の動向については、当社アナリストへお気軽にご相談ください[MD3][TU4] 。

植村 卓弥 (Takuya Uemura) - Senior Research Manager, AI and Automation, IDC Japan - IDC Japan

IDC Japanにおいて、年間情報提供プログラムであるJapan AI and Data Platformsのリードアナリストとして、国内AI市場について、サービス/ソフトウェア/インフラストラクチャといったテクノロジースタック全般の予測やシェアの調査/分析を担当する。 IDCでは、15年以上に渡り、ビジネスコンサルティングやITサービス市場などサービス市場全般の予測や競合分析、企業ユーザーニーズなどの調査を担当し、国内市場におけるデジタルトランスフォーメーション/デジタルビジネスの動向と、これらを実現するサービス市場(デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場)についての専門性を持つ。 IDC Japan入社前は、主に国内大手IT ベンダー/通信事業者/電機メーカーなどに向けて、上位レイヤーサービスや各種製品の事業性評価などの調査・コンサルティングに従事。IT関連市場においてSMBを含む法人、消費者の各市場分野についての定量、定性両面の調査経験を有する。 【専門の分野/テーマ】 国内AI市場 国内企業のAI駆動型(AI Fueled)ビジネス動向

これまで、国内のビジネスコンサルティング市場の成長は、個別テーマへの需要と、それを担うコンサルタントの人員拡大によって説明されてきました。「需要が増えれば人を増やし、売上が伸びる」これが長く前提とされてきた成長の方程式です。

しかし、その前提は変わりつつあります。IDCは、国内ビジネスコンサルティング市場の支出額が、2025年の約8,822億円から2030年には約1兆4,064億円へと、年間平均成長率(CAGR:Compound Annual Growth Rate)9.8%で拡大を続けると予測しています。

2025の市場規模(支出額)

8,822億円

2030年までのCAGR

9.8%

注目すべきは規模だけではありません。AIを核とした企業変革が市場を牽引する中で、案件の規模や収益化、そして成長と人員数の関係そのものが構造的に変化し始めています。本稿では、IDCの最新予測から読み解ける3つの構造変化を解説します。

図表1:国内ビジネスコンサルティング市場 支出額予測(2025年~2030年)

Source: IDC 2026/6

構造変化(1)AIを核とした「全社変革」が市場を牽引し、案件が大型化する

成長の最大のドライバーは、企業のAI活用と変革需要です。生成AIやエージェンティックAIが「試す」段階から「変革する」段階へ移行し、局所的なAI導入ではなく、業務プロセス・データ基盤・組織体制を一体的に変革する全社変革型の案件が増え、ディールサイズの大型化と複数年にわたる長期プログラム化が進んでいます。

この動きはセグメント別の成長率にも表れています。業務改善コンサルティングは、AIエージェントの業務実装支援やERPのサポート終了(EOS)対応、レガシーモダナイゼーションに伴う上流支援を背景に、全セグメントで最も高い成長を示す見通しです。組織/変革コンサルティングも、後述する「人と組織」の変革需要を背景に堅調な成長が見込まれます。

構造変化(2):「人員増を上回る成長」への転換

より本質的な変化は、売上成長と人員数の関係が切り離され始めていることです。従来の労働集約的な人月モデルに対し、人員数の伸びを上回るペースで売上を拡大するファームが増えています。背景には、複数の要因が同時に作用しています。

  • フィー単価の上昇:人材の供給不足を背景に、案件単価が人員数の伸びを上回って上昇し、1人当たり売上を押し上げています。
  • ソリューション化・アセット化:再利用可能なフレームワークやAIツール、業界別テンプレートを提供物に組み込み、人員を比例的に増やさずに価値を拡大しています。
  • グローバルデリバリーの活用:海外デリバリーセンターやニアショア/オフショアを活用し、国内人員コストを抑えながら供給能力を拡張しています。
  • AIによるデリバリー生産性の向上:現時点で「劇的」ではないものの、1人当たり売上額の着実な向上として表れ始めており、2030年に向けて効果は累積していきます。

さらに中長期では、提供モデルそのものの変容も萌芽的に進んでいます。

  • 成果報酬型(アウトカムベース)契約:顧客の成果指標に連動した報酬設計。
  • プラットフォーム/マネージドサービス型:継続的な収益(リカーリング)を生む提供形態。
  • BOT型・内製化支援:顧客の自走を支えるBOT(Build-Operate-Transfer)型の関与モデル。
  • GCCの活用支援:GCC(グローバルケイパビリティセンター)の構築・活用支援。

これらはまだ一部にとどまりますが、顧客の価値可視化ニーズの高まりとともに採用事例は増えており、人月依存型モデルからの構造転換がファーム各社の戦略課題として明確になりつつあります。

構造変化(3):「人と組織」の変革支援が成長の中核テーマに

企業変革の主軸は、戦略と業務、人と組織、テクノロジー(AI)を横断する形へと拡張しており、中でも「人と組織」の変革支援の重要性が高まっています。全社的なAI変革においてチェンジマネジメントとタレント支援は不可分であり、その需要は単独の案件としてだけでなく、大型変革案件の不可欠な構成要素として組み込まれる傾向を強めています。具体的には、以下のような領域で需要が拡大しています。

  • リスキリング/アップスキリング:AIを前提とした働き方に向けた人材育成。
  • 人的資本経営(HCM):戦略立案から実践までの支援。
  • ワークフォース変革:AIケイパビリティを軸とした役割・組織・チームの再設計。
  • チェンジマネジメント:大型変革プログラムに組み込まれる変革推進支援。

これらは経営戦略や財務・経理など他機能と統合され、複合的な「経営課題」として扱われるようになっています。組織変革の実績を持たないファームは、最も価値の高い変革案件を獲得・維持することが難しくなりつつあります。

ビジネスコンサルティングはITコンサルティングを上回る成長を続ける

国内コンサルティング市場全体(ビジネス+IT)は、2025年の約1兆4,554億円から2030年には約2兆2,897億円へと拡大します。このうちビジネスコンサルティングはCAGR 9.8%でITコンサルティング(同9.0%)をわずかに上回り、全体に占める構成比は2025年の60.6%から2030年には61.4%へと緩やかに上昇する見通しです。背景には、AIを核とした変革の入り口が「経営アジェンダ」からトップダウンで設定されるようになり、戦略立案や業務変革設計といったビジネスコンサルティング領域から案件が起動するケースが増えています。主要事業者の多くが上流のビジネス領域とIT実装を一体化したデリバリーへ移行しており、ビジネスコンサルティング比率の高い案件が収益成長を牽引しています。

コンサルティング事業者のリーダーへの示唆:2030年に向けた5つの戦略的優先事項

以上の構造変化を踏まえると、市場の拡大に乗るだけのファームは、構造転換を進めた競合に成長率で劣後するおそれがあります。次の成長フェーズを取り込むために、各社が優先すべき打ち手は明確になりつつあります。

  • AIを核とした全社変革案件の獲得:個別ソリューションではなく、複数年にわたる大型プログラムにポジショニングする。
  • AIによるデリバリー生産性への投資:競争要件になる前に、今から体制と仕組みを構築する。
  • スケーラブルなソリューション・アセットの整備:人員数に比例しない収益構造へ転換する。
  • 「人と組織」の変革ケイパビリティの確立:最大級の案件を勝ち取る鍵として、組織変革の実績を積む。
  • 成果報酬型・プラットフォーム型モデルの探索:価値の可視化を求める顧客の増加に備える。

国内ビジネスコンサルティング市場は、これからも堅調に拡大します。しかし、その成長の「中身」は、AIを前提とした提供モデルへの転換と、「人と組織」を中核に据えた全社変革支援へと確実にシフトしていきます。この構造変化を早期に捉え、自社のオファリング・人材・デリバリー体制を適応させたファームこそが、2030年に向けた次の成長フェーズを取り込むことができるでしょう。

関連する調査やご相談について

本稿は『国内ビジネスコンサルティング市場予測、2026年~2030年』(IDC #JPJ53501026、2026年5月発行)に基づいています。市場規模・予測の詳細、セグメント別・産業分野別のデータ、主要事業者の動向については、当社アナリストへお気軽にご相談ください。

植村 卓弥 (Takuya Uemura) - Senior Research Manager, AI and Automation, IDC Japan - IDC Japan

IDC Japanにおいて、年間情報提供プログラムであるJapan AI and Data Platformsのリードアナリストとして、国内AI市場について、サービス/ソフトウェア/インフラストラクチャといったテクノロジースタック全般の予測やシェアの調査/分析を担当する。 IDCでは、15年以上に渡り、ビジネスコンサルティングやITサービス市場などサービス市場全般の予測や競合分析、企業ユーザーニーズなどの調査を担当し、国内市場におけるデジタルトランスフォーメーション/デジタルビジネスの動向と、これらを実現するサービス市場(デジタルビジネスプロフェッショナルサービス市場)についての専門性を持つ。 IDC Japan入社前は、主に国内大手IT ベンダー/通信事業者/電機メーカーなどに向けて、上位レイヤーサービスや各種製品の事業性評価などの調査・コンサルティングに従事。IT関連市場においてSMBを含む法人、消費者の各市場分野についての定量、定性両面の調査経験を有する。 【専門の分野/テーマ】 国内AI市場 国内企業のAI駆動型(AI Fueled)ビジネス動向

AIエージェントの台頭を背景に、ソフトウェア市場では「SaaS is Dead?」をはじめとするアプリケーション市場の終焉論が各所で語られるようになっています。しかし、日本のソフトウェア市場は今、一世代に一度の成長サイクルへと踏み出そうとしています。

IDCの最新調査「Worldwide Semiannual Software Tracker, 2025H2(2026年5月発行)」は、2030年までに国内ソフトウェア市場が20兆円規模に達すると示しています。この成長は漸進的な量的拡大ではなく、あらゆるソフトウェアセグメントにわたるAIネイティブソフトウェアへの構造的転換が原動力です。

「市場は縮小しない、変革する—そして変革こそが成長の源泉となる」

数年おきに、特定のソフトウェアカテゴリが終焉を迎えるという言説が繰り返されてきました。かつてはオンプレミス、次いで企業向けIT、そして今やSaaSが「時代遅れ」の槍玉に挙がっています。その根拠は単純です——AIエージェントがあらゆる業務を自動化できるなら、多層的なアプリケーションにコストをかけ続ける意義はどこにあるのか、というものです。

IDCの最新データは、この問いに明確な答えを示しています。ソフトウェアはAIによって陳腐化するのではなく、AIによって根本から作り直されているのです。そしてこの転換は、多くの関係者が想定していたよりもはるかに速いペースで進行しています。

実際、2025年末時点で日本企業の50%以上がすでに生成AIを本格導入しており、PoC段階を含めると90%以上が何らかの形で活用しています。AIエージェントについても、40%超の企業でパイロットまたは本番環境での運用が始まっています。IDCはこの現状こそが、今後5年間の成長を測る出発点になると見ています。

「3つのセグメント、1つの共通エンジン」

IDCは国内ソフトウェア市場を3つの主要セグメントに分類して予測しています。いずれのセグメントでもAIによる再編が進行中ですが、成長の速度や性質にはセグメントごとに明確な差異が見られます。

出典:Worldwide Semiannual Software Tracker 2025H2, IDC Japan, June 2026

「際立つ存在:AIコアソフトウェア市場」

アプリケーション開発/デプロイメント市場の中に、特筆すべき市場があります。生成AIファウンデーションモデルやAIエージェントを含む「AIコアソフトウェア市場」は、予測型AI、生成AI、エージェンティックAIの導入進行によって大きく成長すると予測しています。

これが、アプリケーション開発/デプロイメント市場全体のCAGRを51.7%へと押し上げている主要因です。AIは既存のソフトウェアカテゴリを単に強化しているのではなく、5年前には存在しなかったまったく新たなカテゴリそのものを創出しています。

「着実な拡大:アプリケーション市場とシステムインフラストラクチャ市場」

アプリケーション市場はCAGR 9.2%という堅実なペースで成長を続け、2030年までに4兆2,223億円に達すると予測されています。これは成長の鈍化ではなく、既存レイヤーが「置き換え」ではなく「AIへのアップグレード」として進化していることを示しています。アプリケーションベンダー各社はAI/エージェント機能を製品に組み込み差別化を図っていますが、ソフトウェアをゼロから再構築しているわけではありません。

システムインフラストラクチャソフトウェア市場も同様の傾向を示しています。CAGR 9.5%での拡大は、切実なオペレーション上の課題が牽引しています。セキュリティ領域でのAI活用、AIOps、そして自律型エージェントによるITシステム管理は、セキュリティ、ITオペレーション分野での人材不足が深刻化する中、もはや選択肢ではなく必要不可欠な手段となりつつあります。

「IDC最新データが示す示唆」

ベンダーにとって、問いの中心はすでに「AIを取り入れるべきか」から「どこまで深く組み込むか」へと移っています。表層的なAI統合はすでに標準化されつつあり、先行するプレイヤーはAIを段階的な機能追加としてではなく、製品そのものの抜本的な再設計として捉えています。

ITバイヤーにとっては、明確な近道を示しています。AI対応アプリケーションの採用は、カスタムビルドソフトウェアの完成を待つよりもはるかに早く価値創出を実現します。すでにAIを本番環境で稼働させている企業と、まだ計画段階にとどまる企業との差は、着実に開き続けています。

「SaaSは終わった」という言説は、現実を見誤っています。終焉の圧力にさらされているのは、静的でAIへの対応を怠ったソフトウェアです。一方、AIネイティブソフトウェアは成長を続けており、エージェント中心の世界に向けて設計され、前世代のツールには不可能だった形で市場を切り拓いています。日本のソフトウェア市場が2030年に20兆円規模に達するという予測は、過去の成長サイクルの単純な繰り返しではありません。IDCはこれを、業界そのものが根底から姿を変えていることを告げる構造的なシグナルと捉えています。

出典:IDC Japan、Worldwide Semiannual Software Tracker 2025H2、2026年5月発行

関連する調査やご相談について

より詳細なインサイトや市場動向については、当社アナリストへお気軽にご相談ください。

Takashi Manabe - Senior Research Director, AI and Automation, IDC Japan - IDC Japan

Takashi Manabe is the Senior Research Director of AI and Automation groups in IDC Japan. Mr. Manabe's primary responsibility includes the analysis of the dynamics and trends, vendor strategies, and market sizing/modeling of Japan’s enterprise AI related market including Software, Services and Infrastructure. He also covers Security, Data Management/ Bigdata Analytics, Customer Experience and Digital Transformation market related to AI. Before joining IDC, Mr. Manabe worked at Toshiba Corporation, Toshiba America Information Systems, Inc., and Toshiba TEC Corporation. 20 over years his experience in the communications and software market, Mr. Manabe started his business as a system engineer for PBX/enterprise data communications equipment in Toshiba Corporation. He was also act as product planning and marketing manager for communication equipment/ software. He also acted as business planning, business management in Toshiba America's age for cable TV Internet business in the enterprise, security software and consumer communication market. Just prior to join IDC, Mr. Manabe worked at Toshiba TEC Corporation, for document solution such like MFP remote management system, scan OCR solution as product planning manager. Mr. Manabe graduate of Muroran Institute of Technology, Japan, holds a Master Degree of Computer Science and Engineering. He also holds a Bachelor degree in Computer Managed Machinery Systems from Muroran Institute of Technology.

日本のテクノロジー市場で事業展開するベンダーやサービスプロバイダーにとって、AIインフラが成長するかどうかは既に決着した問題です。問題は、AI向けサーバーやストレージで構成される国内AIインフラ市場が1兆円の壁を超えようとする中で、どれだけ速く、どのような形で、そして誰がその市場を獲得できるかということです。

IDCの最新データと予測は、市場成長について明確な答えを示しています。以下は、このエコシステムのすべてのベンダーが理解すべき戦略的視点です。

1兆円への道筋:市場機会を定義する3つのマイルストーン

IDCは、今後5年間で国内AIインフラ市場が明確かつ力強い成長軌道を描くと予測しています。特に注目すべきマイルストーンは3つあります。

これらは楽観的な予測ではありません。政府の政策、エンタープライズのデジタル化への圧力、ハイパースケーラーのコミットメント、そしてAIの日本経済への不可逆的な統合という構造的な力に裏づけられており、その流れが反転する兆候はありません。

国内AIインフラの現在地:この成長を可能にする土台

これから起きることの規模を理解するには、日本のAIインフラ市場がいかに速く動いてきたかを把握する必要があります。2025年、国内市場は6,700億円に達しました。アクセラレーター搭載サーバーに限れば、2023年から2025年の3年間のCAGRは200%に迫り、世界平均を大きく上回っています。

この成長は偶然ではありません。政府の経済安全保障政策と国内資本の動員が意図的に重なり合った結果です。政府の技術的自立を推進するクラウド関連政策の下、国内資本のサービスプロバイダーや通信キャリアが、日本市場では稀に見るスピードで大規模なAIインフラ整備に乗り出しました。

物理的な変化も目覚ましいものがあります。かつての2U GPUサーバーから、ラックスケールシステムや水冷を前提とした複数ラック構成が標準的になり、データセンター全体がAIワークロードを中心に設計される時代へ向かっています。2025年の6,700億円規模の市場はこの土台の上に成り立っており、2030年の1兆円市場はその次に来るものの上に築かれます。

ベンダーが理解すべき市場の構造的ダイナミクス

2025年の国内AIインフラ市場は、ハイパースケーラーを含むサービスプロバイダーに大きく集中しており、市場支出全体の90.6%を占めています。この数字には、2030年に向けた競争環境を形成する3つのダイナミクスがあります。

・拡大を続けるハイパースケーラー: 投資シェアは2022年の39.8%から2025年には58.9%に急増し、3年間で19ポイントの上昇となりました。ハイパースケーラーのプラットフォームとロードマップへの対応は、この市場における存在感を維持するための前提条件であり続けます。

・戦略的重要性を持つ国内サービスプロバイダー: 政策支援を受けた国内サービスプロバイダーや通信キャリアを含むその他のサービスプロバイダーは、ハイパースケーラーの急拡大にもかかわらず、2025年のシェアを31.6%と維持し、2022年の31.8%からほぼ横ばいです。このセグメントは、純粋な価格競争よりもローカルな信頼、法規制対応、継続的なパートナーシップを重視する、強靭な顧客基盤です。

・次の成長フロンティアとなるエンタープライズの直接投資:現在9.4%という市場シェアながら、エンタープライズのAIインフラ直接投資は2022年比で絶対額が倍以上に拡大しており、成長の萌芽は確実に生まれています。現時点では大多数のエンタープライズが生成AIサービスやSaaSを通じてAIを利用していますが、AIへの野心が深まり、消費から保有へと移行するにつれて直接投資は加速します。今エンタープライズとの関係を構築するベンダーが、この波を最も有利な立場で捉えられます。

セミソブリンAIモデル:日本を特徴づける戦略的アーキテクチャ

2026年4月、マイクロソフトは2026年から2029年にかけて日本へ約1.6兆円を投資する計画を発表しました。これと合わせて、国内パートナー2社が国内で運用するAIインフラをAzureから利用可能にする構想が示されました。国内サービスプロバイダーの保有するAIインフラが、グローバルなハイパースケーラーのサービスレイヤーに接続されます。

IDCはこの構造を「セミソブリンAI」と捉えており、日本のAIインフラ戦略の特徴的なモデルとして急速に確立されつつあります。外国資本のハイパースケーラーへの完全依存でもなく、完全独立の国内AIインフラという過大なコストを強いるものでもない、現実的かつ政治的にも持続可能な折衷案です。

ベンダーにとって、このモデルは制約ではなく構造的な機会です。セミソブリンAIは、インフラ設計、システムインテグレーション、マネージドサービス、コンプライアンス対応、そして日本固有のAIプラットフォーム開発において、豊かで拡大し続ける市場を生み出します。このモデルを深く理解し、その中に意欲的に自社を位置づけるベンダーやインテグレーターが、2030年以降の日本AIインフラ市場の競争環境を定義することになります。

ベンダーへの示唆:動くなら今

国内AIインフラの基盤を築いた政策主導のアプローチは、需要主導の成長段階へと移行しています。もはや、適切なAIインフラが存在するかどうかは中心的な質問にはなりません。問うべきは「誰がエンタープライズのAI活用を、測定可能なビジネス価値を生む形へスケールさせるのか」です。この市場で競争するベンダーには、3つの行動指針が求められます。

エンタープライズのエンゲージメントの加速:現在9.4%というエンタープライズのシェアが、明日の成長ストーリーになります。エンタープライズとの関係構築、日本特有のユースケース開発、ROI実証フレームワークに投資するベンダーが、この10年で最大の需要の波に乗る準備を整えられます。

セミソブリンAIモデルへの適合: 国内のAIインフラ所有者、ハイパースケーラーのサービスレイヤー、政府の政策フレームワークの相互作用を理解することは、持っていたほうが良い背景知識ではありません。この市場で勝つための戦略地図です。

規模だけではない市場理解: 国内市場は持続的な地域へのコミットメント、深い技術的専門性に加え、日本の商習慣にも理解を示すベンダーを評価します。1兆円のチャンスは単なる取引量だけでは捉えられません。

ベンダーシェアや需要構造の詳細はIDC Worldwide Quarterly AI Infrastructure Trackerで継続的に分析しています。

関連する調査やご相談について

より詳細なインサイトや市場動向については、当社アナリストへお気軽にご相談ください。

Shinya Kato - Senior Research Manager, Enterprise Infrastructure, Data & Analytics, - IDC Japan

Shinya Kato is a Senior Research Manager at IDC Japan and is responsible for the data analysis and forecasting team of Japan enterprise infrastructure market. He analyzes the impact of product technology, service offerings, and marketing strategies on enterprise infrastructure market and provides market forecasts, focusing on the domestic enterprise storage systems market. Through understanding technology adoption trends, he also provides insight into emerging devices such as flash, accelerators, and quantum computing. In addition to researching the HPC and AI infrastructure markets, he is also investigating new consumption models such as Hardware-as-a-Service, to help stimulate the market. Prior to joining IDC, he spent more than 10 years at Silicon Graphics, which was later acquired by HPE, where he held various domestic positions in sales, marketing, and business development. He has covered a wide range of businesses, from infrastructure hardware and container-based data center facilities to digital asset management, industrial virtual reality, and software for media & entertainment. He also served as a product manager for enterprise internet security software and appliances at the emerging vendor. He holds a Bachelor of Economics degree from Rikkyo University.

レガシーシステムが稼働し続けるたびに、競合他社が優位を築いていく。日本の2.1兆円規模のITモダナイゼーション市場は待ってくれない—変革を急ぐ企業も同様である。

主要指標

1,304億円 — ITモダナイゼーションサービス市場規模(2025年)

10.2% — 年平均成長率(2025〜2030年)

2,123億円 — 市場規模予測(2030年)

約80% — 依然としてレガシーシステムを稼働させている大企業・中堅企業の割合

なぜ日本は世界を上回るペースで成長しているのか

日本のITサービス市場は2024年から2029年にかけて年平均6.6%成長すると予測されており、世界平均の3.6%のほぼ2倍にあたる。その背景には構造的な要因がある。日本は特有の重いレガシー資産を抱えている——長年にわたる汎用機(メインフレーム)やオフィスコンピュータなどへの投資、複雑な個別開発システム、そしてそれらを長年維持してきた人材がある。今、これら三つに起因する課題が重なり合う中、ITモダナイゼーションが避けられないものになっている。

富士通メインフレームのサポート終了

2022年、富士通はメインフレームおよびUNIXサーバー製品の販売・サポートの2030年前後の終了を発表した。この発表により、1,000社以上の企業が後戻りのできないカウントダウンに入り、日本市場全体でITモダナイゼーションの取り組みが加速している。

AIへの対応という至上命題

AIの活用には、緊密に統合されたデータパイプラインと近代的なビジネスプロセス基盤が前提となる——まさにレガシーシステムはこれらの実現を阻む要素となっている。AI競争力を維持したい企業にとって、ITモダナイゼーションはもはや選択肢ではない。

人口動態の圧力

日本のレガシーシステムを構築・維持してきた世代のエンジニアが退職しつつある。そのノウハウや技術が失われてしまう前に、知識とインフラを移行できる時間は着実に縮まっている。

モダナイゼーションへの三つのアプローチ

IDCはITモダナイゼーションサービスを三つの実行タイプに分類しており、それぞれがサービス企業に異なる意味をもたらす。

リホスト

既存のアプリケーション資産を維持しながら、レガシー以外のプラットフォームへリフト&シフトする。予算や移行期間に制約を抱える企業にとっての入口となる手法である。

リライト

ビジネスロジックを変えずに、レガシーのソースコードを現代的な言語に変換する。管理された変革のための中間的なアプローチである。

リビルド

プロセス、データモデル、アーキテクチャをゼロから再定義する。最も高い価値をもたらす一方、最も複雑なアプローチでもある。

短期的には、リホストはリビルドに次ぐ2番目に大きなセグメントであり、メインフレームなどのEOL(End of Life)に対し早急な対応を要するに企業による支出が市場を牽引している——ただし既に成熟期を迎えており、今後はマイナス成長が予測されている。中長期的な成長機会は、アプリケーションのモダナイゼーション——リライト、リファクタリング、マイクロサービス化やクラウドネイティブアーキテクチャの採用——にある。

国内ITモダナイゼーションサービス市場 支出額予測: 2025年~2030年

Source: IDC Japan, 2/2026

企業がサービスプロバイダーに本当に求めているもの

IDCの調査では、レガシー依存度が相対的に高い大企業・中堅企業は、単なる技術的な実行だけを求めているのではなく、変革のパートナーを求めていることがわかった。セキュリティは基本的な前提として期待される一方、上位のニーズにはビジネスプロセス変革の支援やクラウド活用支援が挙がっている。

需要のシグナルはセクターによっても明確に異なる。

金融サービス

クラウドネイティブなアプリケーション開発能力、すなわち近代的なインフラ上で素早くイノベーションを起こす能力を優先している。

製造・流通

ビジネスプロセスの変革を優先している。基盤となる技術を刷新するだけでなく、業務に効率性とインテリジェンスを組み込むことを重視している。

全セクターを通じて、IDCは企業の期待に一貫した変化を観察している。ビジネス上の成果が主要な購買基準になりつつある。技術的な能力は当然のこととして見なされ、価値の創出が差別化要因となっている。

今、勝てるポジションを築くために

サービス企業にとって、競争上の必要性は明確だ。この市場で勝利する最良のポジションにある企業は、次の三つを実行する。

1. レガシーモダナイゼーションの実績を体系化する

過去の案件は活用されていない資産だ。サービス企業は、達成したビジネス成果——コスト削減、リードタイムの改善、AI対応力の解放——を体系的にまとめた資料を構築し、これを市場への訴求の核にすべきである。

2. AIの時代に向けた業種別のリファレンスアーキテクチャを開発する

汎用的なモダナイゼーションの提案は説得力を失いつつある。企業は自社のセクター、規制環境、そしてAIへの志向に合わせたシステムアーキテクチャと実装ロードマップを求めている。

3. 需要に先行してアプリケーションモダナイゼーション能力に投資する

リホストの波は既にピークに差し掛かりつつある。高い利益率をもたらす機会——リライト、リファクタリング、リビルド——がその後に続いている。クラウドネイティブとマイクロサービスの深い能力を培ったサービス企業こそが、2030年に向け企業から選ばれる存在となる。

IDCが提供するレポートのご紹介

IDCでは、国内ITモダナイゼーション市場の動向を詳細に分析したレポートを発行しています。

本調査レポートは、IDCの国内サービス市場予測における主要な成長促進要因の一つであるレガシーシステム(老朽化・陳腐化、肥大化・複雑化、ブラックボックス化したシステム)のITモダナイゼーションについて、市場規模の中期予測を示すと共に、国内企業(ITバイヤー)の取り組み動向や、それを支援するサービスベンダーの動向を分析しています。国内ITモダナイゼーションサービス市場予測では、サービスセグメント別、実行タイプ別(リホスト、リライト、リビルド)、システムタイプ別、産業分野別に予測しています。これらの分析から、国内企業のITモダナイゼーション支援におけるニーズ変化や市場機会、サービスベンダーの支援サービスの特徴や戦略を包括的に把握できます。

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Masaru Muramatsu - Senior Research Analyst, Software, Services, and IT Spending, IDC Japan - IDC Japan

Masaru Muramatsu is a senior research analyst, responsible for research and analysis of the Japanese IT services market, including IT consulting, systems integration, business services. Prior to joining IDC, Masaru worked to help digitalize local government in Japan, implementing software as a service (SaaS) in the education and taxation sectors. He also acquired experience in domestic and international sales/marketing with his work for a company that provided materials for electronic devices like smartphones, PCs, and printers. Masaru Muramatsu earned a master’s degree in engineering from Chuo University, Japan.